7月3日に発行される新1万円札の肖像に選ばれた実業家・渋沢栄一。その直筆の書が大仙市内の施設2カ所に展示されている。
渋沢は1882(明治15)年と1917(大正6)年に2度秋田を訪れている。最初は第一国立銀行頭取として、東北各地を巡回し、秋田市、男鹿市、大仙市に立ち寄り地元の名士たちと面談を行った。
国登録有形文化財「旧本郷家住宅」(大仙市角間川西中上町)にも立ち寄り、秋田銀行角間川支店の前身となる秋田改良社の初代頭取でもあった6代本郷吉右衛門と面談。その際、本郷の頼みに応じて揮毫(きごう)した「緑意紅情」の扁額(へんがく)が同施設に展示されている。「初心を忘れず、情熱を持って事を行いましょう」というように解釈され、渋沢と本郷のやりとりのエピソードが残る。
市文化財課の佐藤健太郎さんは「今回の新紙幣発行を機に初めて知る方も多いのではないかと思う。秋田と渋沢とのつながりを知ってもらえたら」と話す。
荒川鉱山(大仙市協和荒川)を開発した瀬川安五郎の元も訪れ、その活状を七言絶句に詠み送った。その時の書が民俗資料展示館「大盛館」(大仙市協和荒川荒川前)に展示されている。
同館館長の阿部成吾さんは「見学案内をすると、この書に興味をもってくれる方も多い。今後も地元の子どもたちなどに見てもらいたい」と話す。
開館時間は、旧本郷家住宅=9時~16時、大盛館=9時~16時30分。共に入館無料。月曜定休。