住民参加型の新たな地域交通づくりを目指すワークショップ「みんなで育てる!新しい地域交通プロジェクト」が12月12日、太田文化プラザ(大仙市太田町太田新田田尻)で開かれた。
大仙市が、公共交通の利用者減少や交通事業者の運転手不足といった課題を背景に、地域の実情に即した持続可能な交通のあり方を探ることを目的に企画した。
第1回ワークショップは太田地域が対象で、参加者は男性12人、女性5人。65歳以上の高齢者が全体の約6割を占めた。交通コンサルティングを手がける「バイタルリード」(島根県出雲市)が進行を担当し、参加者は4グループに分かれてグループワークを行った。福島大学の学生4人がファシリテーターとして各グループに入り、意見整理をサポートした。
ワークでは、「太田地域の良い点」や「移動に関して困っていること」をテーマに意見を出し合い、付箋を使って可視化。スーパーがあり日常の買い物に困らない点や、自然環境の豊かさ、地域住民の親切さといった強みが挙げられた一方、高齢による運転への不安、孫の送迎負担、タクシー料金の高さ、バス停までの距離といった移動に関する課題も多く出された。
ワークに参加した太田地域在住の60代男性は「高齢のため運転が不安になってきた。タクシーは料金が高いし、家の近くにはバス停もなく不便を感じている」と話す。
企画を担当した大仙市の進藤尚人さんによると、近年、交通事業者の深刻な運転手不足により、現在維持できている路線でも将来的な継続が難しくなる可能性が高まっている。行政や事業者だけでなく、地域と一体となって交通を支えていく視点が不可欠だという。
同市では初実施となる「住民ワークショップによる意見出し」に重きを置いた理由について、進藤さんは「国でも公共ライドシェアなど一般ドライバーの参入を認める制度改正が進んでいる。いざという時に円滑に対応できるよう、今のうちから地域の皆さんと考え方を共有しておくことが重要」と説明する。
ワークショップで印象に残った点として、「市が実施してきた乗合タクシー制度を『知らなかった』という声が非常に多かったこと」や、「参加者の中で、直近1カ月間に公共交通を利用した人がゼロだったこと」を挙げ、「自家用車依存が想定以上に進んでいる現状を改めて認識した」と振り返る。
進藤さんは「将来的に免許を返納した際、誰もが公共交通を利用する場面が訪れる。『移動に困らない地域』であるためにも、地域の皆さんと一緒に公共交通をつくり、支えていきたい」とプロジェクトへの参加を呼びかけた。
1月25日には第2回ワークショップを開催予定。理想的な移動手段や出かけたい目的地など、より具体的なテーマについて意見交換を行う。対象は太田地域在住者。参加無料。